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「現金じゃなくてリストから選んで」——アメリカの結婚式に招待された日本人が最初に感じる、あの独特の戸惑い

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「現金じゃなくてリストから選んで」——アメリカの結婚式に招待された日本人が最初に感じる、あの独特の戸惑い

招待状と一緒に届いた、見慣れない「リスト」

ニューヨーク在住のMikaさん(30代・会社員)が初めてアメリカ人の同僚の結婚式に招待されたのは、渡米して半年が経った頃のことだった。

「招待状の封筒の中に、Crateというお店の名前とウェブサイトのURLが書かれた小さなカードが入っていたんです。最初は何のことかまったくわからなくて、同僚に聞いたら『ギフトレジストリだよ、そこから好きなものを選んで贈ってあげて』って言われて……」

ギフトレジストリ。日本では馴染みの薄いこのシステム、アメリカでは結婚式の準備においてほぼ欠かせない文化として定着している。カップルが事前に欲しいものをリスト化し、ゲストはそこから予算に合わせたアイテムを選んで購入する。Amazonや百貨店のWilliams-Sonoma、インテリアショップのPottery Barnなど、様々なブランドがこのサービスを提供している。

日本で育ったMikaさんにとっては、まず「そもそも何が欲しいかを事前に公表すること」自体が文化的なショックだったという。

「日本だと、欲しいものを自分から言うって、なんか……図々しい感じがするじゃないですか。でもここでは、それが親切心なんですよね。ゲストに余計な気を遣わせないための配慮だって気づくのに、しばらく時間がかかりました」

「いくら包む」という発想自体が存在しない

アメリカの結婚式文化を理解するうえで重要なのは、「現金を渡す」という概念が日本ほど一般的ではない、という点だ。

日本では、結婚式のご祝儀は3万円が相場とされ、友人なら3万円、上司や親族なら5万〜10万円、といった暗黙のルールが存在する。新札を用意し、ご祝儀袋を選び、表書きの書き方まで気を遣う——それ自体がひとつの文化的儀式だ。

一方アメリカでは、現金を贈ること自体は決して珍しくないが、「いくら包むべきか」という厳格な相場観はあまり存在しない。むしろメインは、リストから選んだモノを贈ることだ。

LAに住むKenjiさん(40代・フリーランス)は、アメリカ人の友人の結婚式に招待されたとき、ご祝儀袋に現金を入れて持参した。

「受付で渡そうとしたら、ギフトテーブルを指差されて。テーブルには包装されたプレゼントがずらっと並んでいて、自分の封筒だけが完全に浮いていた(笑)。後から聞いたら、現金でも全然OKなんだけど、リストから選ぶのが一般的だって教えてもらって、次回からはちゃんとリストを確認するようにしました」

予算の「正解」はどこにある?

ギフトレジストリのシステムを理解したとして、次の壁が「いくら使えばいいか」という問題だ。

アメリカでは一般的に、式への出席にかかる費用(会場までの交通費、宿泊費など)を考慮したうえで、ギフトの予算を決めるという考え方が広まっている。親しい友人であれば$100〜$150程度、それほど親密でない知人なら$50〜$75が目安とされることが多いが、これはあくまで目安であって、絶対的なルールではない。

「リストの中に$30のアイテムもあれば、$300のアイテムもあって、最初はどれを選べばいいか途方に暮れました」とMikaさんは言う。「でも、自分の予算に合ったものを選べばいい、って割り切れるようになってからは楽になりました。日本みたいに『この金額だと失礼かな』ってビクビクしなくていいんだって」

リストには消耗品や小物も含まれていることが多く、$30〜$50のキッチンツールや$80程度のリネンセットなど、手頃な価格帯のアイテムも豊富に並んでいる。逆に言えば、高価なものを選ぶことが「より気持ちが伝わる」とも限らない。大切なのは、二人の新生活に役立つものを選んでいるという事実そのものだ。

「モノを贈る」文化の背景にある価値観

なぜアメリカでは現金よりモノを贈る文化が根付いたのか。その背景には、実用主義的な発想がある。

アメリカでは結婚するカップルの多くがすでに同棲しており、生活用品は一通り揃っていることも珍しくない。だからこそ、「本当に必要なもの」「欲しいもの」をあらかじめリスト化して、ゲストに選んでもらうシステムが合理的とされる。

日本の場合、現金を贈るのは「使い道を縛らない」という配慮の裏返しでもある。何が必要かはカップルが一番よく知っているから、お金という形にするという発想だ。どちらが「正しい」というわけではなく、文化的な価値観の違いが、そのままギフトの形に現れているにすぎない。

シアトル在住のYukoさん(30代・教育関係)は、こんな視点を持っている。

「アメリカのレジストリって、カップルが『自分たちの生活をどう作りたいか』を外に向けて表明しているようにも見えるんですよね。このキッチンツールが欲しい、このシーツが好き、って。それって、日本的な奥ゆかしさとは真逆だけど、正直で清々しいとも思う」

式当日、気をつけたいマナーの話

実際に結婚式に参加するうえで、日本人ゲストがもう一点気をつけたいのが「タイミング」だ。

アメリカでは、ギフトは式の当日に持参するのではなく、事前にオンラインで購入してカップルの自宅に直送するスタイルが一般的になっている。式当日にギフトテーブルへ持参することも珍しくはないが、大きな荷物を持ち込むのは式の雰囲気によっては不向きな場合もある。

また、カードを添えることも忘れずに。日本のご祝儀袋のように「形式」は問われないが、一言メッセージを書いたカードはとても喜ばれる。手書きの言葉は、文化を超えて伝わる。

「正解」より「気持ち」が大事、は万国共通

アメリカの結婚式文化に慣れるまで、日本人ゲストが戸惑うのは当然だ。「ご祝儀袋に新札を包む」という体に染み込んだ作法が通じないとわかったとき、何をどうすればいいのかわからなくなる気持ちは、誰でも経験する。

でも、Mikaさんが最後に教えてくれた言葉が、すべてを言い表していた。

「最終的に、二人の新しいスタートを祝いたいっていう気持ちは同じなんですよね。形が違うだけで。それがわかってからは、リストを眺めるのが少し楽しくなりました」

文化の違いに戸惑ったとき、その戸惑い自体が、実は相手の文化への入り口になっている。ギフトレジストリという小さなカードが、そんな大きな気づきを運んでくることもある。

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